2014.12.20 冬の18きっぷの旅

  

 ■2013年12月20日(金)~21日(土)、有給休暇を取って、今回は1泊2日で長野から新潟方面への旅に家内と二人で行く事とした。

 例年であれば、仕事を一段落させなければならない上、年末の大掃除やら帰省の準備やらで大忙しの時期だが、なぜこのような年末に夫婦で旅行する計画を立てたかというと、他でもなく「青春18きっぷ」の使用期間が12/101/10の間しか使えない為である。今年の夏に「青春18きっぷ」を使って福島県に1泊旅行した時、これまでの旅行費用の価値観が変わるほど安価な旅行が出来た事がクセになった感がある。ひょっとしたら旅行の楽しさ、満足感は、コストバリューと大きく関係しているのではないかとも思ったものである。

 それ以来、「青春18きっぷ」の使用期間が近づくと、カレンダーを見ながら旅行日程の可能性をひたすら検討するようになった。旅行先は色々と考えたが、冬の旅行はぜひ雪を見たいものである。自分で車を運転して雪道を行くのはまっぴら御免だが、暖かい電車の中で、車窓を流れる雪景色を見ながら一杯やるのは想像しただけで楽しそうだ。よって行先は雪国に決まりだが、後は何を観光するかを考えてみた。

 私は俗に言う「テツ」ではないので、電車に乗れればそれでいい訳でもなく、未乗車区間を乗りつぶす趣味も無い。鉄道以外の目的がいるのである。

 どんな観光地があるかネットで検索していると、長野市にある「東山魁夷館」が目に留まった。この美術館が所蔵している「年暮る」という絵を見に以前から行きたいと思っていて、まさに年末にこそ見るべきだろうと思い立ったので、長野市まで行き一泊し、2日目はそこから直江津に出で、これも以前から気になっていた「ほくほく線」(18きっぷ使用範囲外)を使って、越後湯沢経由で帰ってくるプランを考えてみた。天候次第では雪も見られるかもしれない。

 

■2013年12月20日(金)630、JR八王子駅に到着。駅内の“BECKS”にて「モーニングセット④」を食べてホームに出ると、ようやく空が白んできた。

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 657中央線甲府行に乗る。家を出るときは雨が降っていたが、電車に乗る時は朝日がさしてきた。天候は良くなる気配だが、天気予報は関東、北陸地方共に「雨または雪」になっている。中央線の見慣れた車窓を見ながら、笹子駅あたりまで来ると車窓の景色に雪が混じり始めたが、遠望は利かない。寒々とした景色がひたすら続くせいか、暖かい季節とは違い、冬の旅はテンションが上がらないものである。

 813塩山駅着。ここで特急列車待ち合わせの為5分ほど停車した。電車内はそこそこ乗客がいるので、ボックスシート占領とはいかず、このまま甲府までこんな状態であろう。

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838甲府駅着。ここで松本行に乗換え、853に出発。車両は同じ115系(青と白のカラーに緑のラインが入ったもの、「長野色」というらしい)だが新しい車両らしくシートは綺麗だった。

 930日野春駅着。ここで特急の待ち合わせで10分停車し、1018上諏訪駅に到着した。只移動するだけの旅は味気ないので、ここで途中下車し、駅に併設された、名物の「足湯」に入る。足湯には誰もいなかったので完全に貸切状態であり、約20分入っている間、ついに誰も入ってこなかった。小雪舞う景色を眺めながら、しばし旅愁に浸った。

 1108同じ115系に乗り上諏訪駅を出発。上諏訪で買った駅弁(名物「とりめし」)をボックスシートで食べようと思ったが、あいにく結構混んでいる上、ビジネス系の人が多く、師走特有の殺気立った感じがしないでもない。旅行気分全開で弁当などを食べ始めたら一斉に視線が突き刺さって来そうで、とても弁当を広げる勇気は無かったので、松本から長野に向かう電車に期待する事にした。

 1144松本駅着。ここからは「篠ノ井線」になるので車両も変わる。車両は2両編成で片側ボックスシート、片側ロングシートというレイアウトである。待合室で車両の入線を待っていたら、はるか遠くに停車した。これでは駅弁どころか座る事も難しいと電車に向けてダッシュし、辛うじてボックスシートを確保できた。ここでやっと弁当を広げることが出来たが、ロングシートに座った方々は当然、全員こちらを向いており、やはり視線が痛い。どんなシチュエーションであろうと、年末押し迫った平日に呑気に旅行している事には変わりない。視線の事は忘れる事にした。

 名物駅弁「とりめし」(㈱カワカミ:610円)この昭和28年発売のロングセラー弁当が発売された当初は、鳥の唐揚げ自体がご馳走であり、鉄道ファンを魅了した弁当であったろうなどと妄想し、昭和のノスタルジーに浸った。

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“駅弁を 食いつ車窓に 眠る山”

 

 1303予定より少々遅れて姨捨駅に到着。この駅は長野盆地千曲川を見下ろすロケーションが素晴らしい事で有名であり、「三大車窓」の一つに選ばれているらしい。しかし生憎、車窓は雪でホワイトアウト状態であり何も見えない。第一、ボックスシートは山側で、盆地側の車窓は見えにくく、肝心の盆地のある車窓側は景色に背を向けたロングシートになっている。これは何とか逆にできないものだろうか?今日の所は何も見えないので、どうでもいいと言えばどうでもいいのだが、三大絶景の車窓をぜひ乗客に見て欲しいという意識が篠ノ井線側にあるのだろうかと思った。

 そうこう考えているうちに、車両は進行方向と逆に動き始めた。そう言えばここは「スイッチバック」があるという事にここで気が付いた。なかなか味わえない貴重な体験ではあるが、乗っている側に劇的な変化があるわけでもなく(突然進行方向を変える点は劇的な変化と言えるかも知れないが)、これに鉄道マニアが高揚する気分はよく解らない。

 1330長野駅着。荷物をコインロッカーに入れ、1350発の路線バスで「東山美術館」に向かう。路上にはすっかり雪が積もっており、スニーカーで来てしまった事に少々後悔する。もはや雪国出身者としての意識も経験値も失っているなと改めて認識した。善光寺北という停留所でバスを降り、雪を踏みながら東山美術館に到着。来館者は数名しかいないのは金曜日の午後であるためだろう。おかげでじっくり好きな絵を見ることができた。お目当ての「年暮る」は、京都市街の大晦日の夜景を描いた作品だが、幸い展示してあったのでテンションは一気に上がった。想像していたよりも小さいサイズ(70cm*50cm程度か?)だった。ひととおり見終わった後も再び戻って見とれていたが、バスの時間も迫っていたので後ろ髪を引かれながら美術館を後にした。

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“美術館 せかす静寂 師走かな”

 

 1512発のバスで再び長野駅に戻り、駅前の「東急シェルシェ」前から1600に出発する旅館のシャトルバスに乗るべく東急前に行くと、連れが靴売り場に行きたがるので一緒に店に入ると、連れのボロブーツは今日の雪道で浸水しており、新しい靴が欲しいようだったので、クリスマスプレゼント替わりに買ってあげることにした。値段を聞くと「8000円」との事であった。しばらく「服はユニクロ」、「靴はABCマートかドンキ」という価値観に慣れていたので、この値段には仰天したが、幸い値引きしてくれて6400円で買う事ができた。長年履き続けたブーツに愛着はあったろうが、ボロブーツは店に処分をお願いした。

 今晩宿泊する「うるおい館」のシャトルバスに乗り1615に旅館に到着した。この旅館は「裾花温泉」という温泉地にあるが、聞き覚えがない温泉名だなと思っていたら、開湯以来十数年という非常に歴史の浅い温泉らしい。夕食前にひとっ風呂浴びる時間があったので風呂に行くと、日帰り入浴客が多いらしく、男風呂はかなり混雑していた。(翌日の朝食時は6組しか宿泊していなかったので、殆どが外部からの入浴客だったようだ)地元の人や、ビジネスホテルの宿泊客なども利用しているらしい。(大人500円)風呂は内湯、露天共にかなり大きい。サウナもあり、旅館というよりスーパー銭湯に近い。泉質はカルシウム分が多いらしい。なかなか湯冷めせず、就寝するまで体が暑かった。夕食は部屋食であり実にゴーカなものであった。何とか食べきろうと頑張ってみたが無理だった。風呂といい、料理といい、雰囲気といい、料金の割に満足感の高い旅館である。今度長野に来る機会があれば、是非また泊まりたいものである。

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“裾花の 湯上り酒や 年の暮れ”

 

■12月21日(土)

 620起床し、すぐ朝風呂に行くと雪が降っていた。しばし露天風呂からの絶景に見とれる。「もう一泊したいもんだな・・・」と朝風呂でしみじみ思ってしまう旅館は「いい旅館」であると個人的に思う。朝食は食堂で和定食、こちらも行き届いたものだった。旅館ではロビーでパンを焼いて売っており、連れはここで昼食用のパンを買っていた。自分もめずらしくパンが食べたい気分だったが、直江津駅で名物の「鱈めし」を買おうとかなり前から決意していたので買わなかった。そういえば昨日も、昼食は駅の立ち食いそばで暖まりたかったが、あまり気が進まないくせに駅弁を買った。既に「旅の昼食は駅弁」という意識が刷り込まれているので問答無用で駅弁を食べているが、少なくとも冬の旅は、温かい昼食を頂きたい気もする。

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 840にタクシーを呼んでもらい、855長野駅に到着した。924発の直江津行をホームで待っていると、駅のアナウンスで、「電車の行き違い」のために10分ほど電車の入線が遅れるとの事である。(雪の影響で?)これは少し困ったことになったなと思った。直江津での「ほくほく線」への接続時間は14分しかない。これに遅れると次の電車まで1時間以上待たなければならず、帰れなくなるわけではないが、新潟県十日町で予定していた観光はできなくなる。(自分にとって十日町は珍しくないが、連れは初めてである)何より予定していた時間通り移動できないのはあまり面白くない。電車はアナウンス通り10分遅れで入線してきた。よって電車は予定より10分遅れて935に発車した。車窓の景色は、今朝の雪をまとった木々や家並みが、白銀に輝いて美しい。しかし電車の遅れが気になるところである。

 1017妙高高原駅着。やはり10分遅れたままであったが、ここから徐々に遅れを取り戻し、直江津には3分遅れて1101に到着した。これなら余裕で間に合う。お目当ての「鱈めし」もすぐにゲットできた。

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 1112発の越後湯沢行ほくほく線に乗り込み、十日町に着く前に駅弁を食べることにした。ほくほく線の車内には「この路線は”青春18きっぷでは乗れません」というポスターやら、アナウンスやらがしつこいほどである。よほど間違える人が多いのだろうが、我々は事前に情報を入れていたので、戸惑う事はなかった。

 「鱈めし」(ホテルハイマート:1100円)は昆布の佃煮の炊き込みご飯に、棒鱈、塩タラコ、野沢菜わさび、鱈の親子漬(酢締めのようなもの)、錦糸玉子、奈良漬、梅干しなどが乗っている。棒鱈は三切れ入っていて歯ごたえはあるものの程よく柔らかい。半生のタラコも実においしい。昨日下諏訪駅で買った赤ワインを飲みながら食べたが、赤ワインにも棒鱈やタラコは合うような気がした。

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 1213十日町駅着。あまり滞在時間が無いのでタクシーを拾い「おとぎの国美術館」に行く。旅行前に、移動経路中に何か見学するようなものは無いかと調べていた時、この美術館が目についた。本当は直江津で「春日山神社」の宝物館に行きたかったが「冬期閉館」との事であきらめざるを得ない。あとは経路中に見るべきものとして気になるのはこの十日町の美術館ぐらいだった。しかし「事前予約が必要」との事で出発前に「13時頃に行く」と予約しておいたのである。この美術館はそれらしい外観をしておらず、一見殺風景な事務所ビルのようである。どうも十日町織物の工場を兼ねているようであり、ビルの二階には織物体験ができる工場、三階の一室が美術館である。とにかくビル内は休日の会社のように人気が無く、美術館の入り口に受付のおじさんがひとり座っていた。きっと今日の予約は我々二人だけで、だれも予約が無ければ閉館しているのだろう。めずらしい「予約者」のせいで、このおじさんは休日出勤したという事情だろうか。想像以上に人気の無い美術館に来てしまったと実感した。

 この美術館はひとりの紙粘土を趣味とする人が、紙粘土で様々な人形を作ったものを展示している。百人一首源氏物語、日本昔ばなし、アニメなどをテーマに作った人形たちは見どころ充分であり、見る人が見れば、あるいははまってしまうかも知れない。写真撮影は自由との事なので、存分に写真を取り、十日町駅への帰路は歩いてみた。町はクリスマスで賑わうでもなく、かつて織物で栄えた町はひっそりとして見えた。

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“クリスマス 飾り滲ませ みぞれ降る”

 

 駅に戻ると、時間を勘違いしたせいで電車に乗り遅れてしまった。止む無く1時間ほど駅で待つ羽目になってしまい、越後湯沢駅構内の「利き酒」を諦めざるを得なくなった。しばらく待合室にいると、構内の立ち食いそば屋からあまりにいい匂いがするので、そういえば十日町に来てそばを食べずに帰るのもどうか?と思い、別に空腹だったわけではないが、暇だったせいもありかけそばを食べた。さすが十日町駅のそばは、いつも食べている新宿駅の地下街にある某立ち食いそば屋よりはうまいと思ったのは、気のせいでも旅情のせいでも無いであろう。

 1410再びほくほく線に乗ると、車両がやけにクリスマス装飾になっているなと思っていたら、時々走っている「イベント車両」だった。地下駅である「美佐島駅」前後で5分ほどトンネルに入るので、この間にイルミネーションイベントをやるのである。車内の天井に星座が映し出され、なかなか面白い映像が流れるが、となりのボックスの若者は見慣れているのか、ずっとスマホの画面を見ていた。

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 六日町に着くと、ここからは上越線路線に入り、懐かしの塩沢駅を通過し、1445越後湯沢駅に到着した。このようなルートを通って旅をすると、見慣れたはずの越後湯沢駅も、知らない北国の駅のような印象を受けるものだなと気付いた。十日町での乗り遅れのために、ここでは接続時間が短いので、恒例の「利き酒」ができない。笹ダンゴを土産に買い、1505発の水上行に乗る。湯沢を出発し、土樽を通過する頃には外は吹雪になり、雪国の凄まじい風景が車窓に展開しているが、この程度の雪で運行に支障が出る路線ではないので、安心しながら電車に揺られていた。

 国境の長いトンネルを抜けると、群馬側も月夜野あたりまでは雪が舞っていた。1656高崎駅着。ここからは八高線に乗換える。1707発の列車は二両編成であった。ほぼ満員乗車だったが何とか座れた。あとは高麗川駅で乗り換えて、八王子に向かうだけである。列車の車窓はすっかり闇になっている。

 満員電車も群馬藤岡駅に着くと、学生が一気に降りたので車内はガラガラになった。静かになった車内に残されると、「旅行」が「帰路」になった感じで、この旅も「想い出」に変わったムードになった。今回の旅も色々な思い出が出来た。文字通り山あり、谷あり、快晴あり、雨あり、雪ありと、どれも旅のシーンと紐付いて、絶妙の味付けになった。帰宅したら高崎駅で買った「だるま弁当」を食べながら、もう一度旅の思い出を噛みしめよう。旅の味付けは、むろん駅弁もしかりである。

 

“駅弁と 旅を納めて 日記果つ”

 

12月21日 19:30帰宅

 

駅弁3:鰊みがき弁当

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鰊みがき弁当  みかど㈱函館営業所  1000円 (函館駅にて購入)

以前より、函館駅に行く機会があれば、絶対に食べようと決めていたので、函館駅の駅弁コーナーで迷わず購入。新青森駅行きのスーパー白鳥の中で食べた。

身欠き鰊は肉厚で歯ごたえが無いくらい柔らかく、味付けも甘すぎず、食欲をそそる。数の子はあまり好物ではないがプリプリして歯ごたえがいい。見た目の印象よりも満足感の高い、噂通りのうまさであった。

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駅弁2:海苔のりべん

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海苔のりべん 福豆屋(福島県) 880円  会津郡山駅で購入

ネーミングの由来は、ごはんの上の海苔は二重になっており、ごはんの上におかか、海苔、その上にごはん、おかか、海苔と重なっている。おかずは厚焼き卵、鮭の塩焼き、かまぼこ、きんぴらごぼう、煮物などと、ご飯の上の梅干しである。この景色は、学生時代の弁当を思い出す。まさに労働者のためのガッツリ弁当を思わせるが、味は控え目であっさりしている。卵焼きの風味、脂の乗ったシャケは食欲をそそる。

★★★★

駅弁1:「えび千両ちらし」

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えび千両ちらし

新発田三新軒(新潟) 1200円 大宮駅で購入

厚さ1cmほどの厚焼き卵焼きが敷き詰められていて、その下にはコハダの酢〆、ウナギのかば焼き、イカの一夜干し、ボイルした車海老が、四等分づつの陣地を形成している。これらと酢飯の間には薄く昆布がひかれていて、酢飯の味を一層引き立てている。贅沢なボリュームの卵焼きと、四種類のちらし寿司の味が楽しめる。実にゴーカな弁当であった。

★★★★

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こんにちは。HACHIHIROです。

このブログは、日常的な出来事や、旅行記録、食べたもの(ラーメン、駅弁など)など、日記的なものを書いていきたいと思います。毎日とはいかないでしょうが、こつこつと記録していきたいと思います。